『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)

「アート」の本だと、手をつけられずにいた。

「このミステリーがおもしろい!」と帯に書いてあって、手を伸ばさずにいた。

私は、アートにも精通していないし、ミステリーは普段読まない。


恥ずかしながら、ピカソはパブロ・ピカソだとは知らなんだ。ルソーと聞いて、私の記憶にかろうじてうっすら存在しているのは、ジャン=ジャック・ルソーの方だ。無論、本書の表紙の絵も、知らなんだ。


それでもこの度読むことになったのは、ブックオフで目があったからである。

原田マハは好きな作家の一人なので、もちろんその代表作「楽園のカンヴァス」の存在は知っていた。いつか読もうとは思っていて、多分その時が来たのだと思う。


アンリ・ルソーの『夢をみた』。一枚の絵画を巡る物語。

私にとっての見所は、ミステリーというよりも、登場人物たちの“欲”だった。

一枚の絵画を巡って、人々の欲が巧妙に絡まり、解け、また絡みあっていく。時代を超えて、次の物語へを紡いでいく。欲は自分を支配し、人を騙し、また人を試しもする。でもその中で露わになってくる、素がある。恋もある。


しばらく小説は読んでいなかったけれど、作られた世界に没頭するのも、いいものだ。

また少し、読み始めよう。

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