言葉を処方する薬局を、駅前に開きましたよ。

2019年5月1日。鳥取駅前の風紋広場で、一日だけ、「言葉を処方する薬局」を開きました。

結果、とても濃密なドキュメンタリーを観ているような一日になりました。

もちろん一人でポツン、とはできませんでした。誘ってくれたのは、ここ風紋広場で、一人「せかいのまんなか」という旗を掲げ、突風に幾度となく破壊されながらもテントをはり、カレー屋さんをしているマサくん。「出店はアートだ!」というようなことをコンセプトに、ジャンルや”出店”にとらわれず、それぞれがやりたい表現をするBOKUGOTOというイベントです。


マサくんに、誘われた時、割とすぐに閃いたのが「言葉を処方する薬局」でした。

本の中から、言葉を拾い集め、それを薬のように処方するのです。

薬はその時の症状にしか効きませんが、言葉は過去の自分や、未来の自分にも効くことがあります。25歳の自分が本を読んで出会った言葉が、10代の時の自分に突き刺さったり。今はわからなくても、数日後、数年後になって「ああ、あの時あの人が言ってたのはこういうことだったか」と腑に落ちたり。慰められたり、クスッと笑えたり。

占いではありませんし、その人に合わせて選ぶわけではありません。直感で、パッと。

考え尽くした結果より、無意識のうちの、偶然の「言葉との出会い」をこの“薬局”を通して作りたいと思いました。ちなみに、今回の処方は200円。原価率も何もないのですが、なんとなく、いい数字だと思いました。(後から気づいたけど、隣のねんど屋さんマサくんも200円でした。)

結果から申し上げましょう。

感動、でした。

途中、「これ、ドキュメント72時間@鳥取駅前風紋広場(架空)だわ。」と思いました。


ちょこっとだけ、どういうドキュメントが繰り広げられたかというと。

まず最初のお客さん。GWの旅行でスーパーはくとで今鳥取に到着したばかりの女性3人組。なんと、「そんなお姉さんに処方したい言葉がある」と、逆処方してくださいました。いきなり、最高です。


他のお客さんに処方している後ろから、じーっと興味深そうに見つめ、並んでくれた女性。言葉を巡る、ご自身の経験を涙を流しながらお話ししてくださいました。これはとっておきのお話でしたので、ここには書きません。これだけでも、今日ここに出店してよかったと思えました。


浪人生だという女の子二人組。一人は、養護教諭を目指していて、まさに保健室は生徒にとって「言葉の薬局」のような場所だと思っていて、「今日このイベントの中でも絶対若葉薬局に来たかったんです」と照れながら話してくれました。「お姉さんとまた話したいから、隼Lab.に行く!」だそうです。お姉さん、嬉しいよう。


こちらも女性2人で来てくれた学生さんは、処方を受けたあと一人は今から地元香川に帰省、もう一人は岡山にプチ旅行ということで、席を立つなり「じゃ!」とふた方向に別れてゆきました。何これ、駅感すごい…!

その他にも、カップルで処方、親子で処方、処方に次ぐ処方で、結局気づいたらイベント終了時間に。そして撤収作業が始まっているなか、「最後に、できますか?」と滑り込みで来てくれた男性二人組もいました。


我ながら、最高、感動。

終わってみればこれほど自画自賛しながらも、一切事前に個人では告知・宣伝をしなかったのにもわけがあります。

私の性格上、「やります」と宣言すると、人に褒められたい、よく見られたいと、肩に力が入ってしまう。それがわかっていたので、やるまで自分の中で、中だけで作り上げたいと思いました。

人には言わず、自分の中で本当に作りたい空間を、削ぎ落としに削ぎ落とし、できたものは出店者の中でも最もミニマムな屋台スタイルでした。ねんど屋とプリン屋の谷間に、小さく開いた薬局は、知り合いにも気づかれていなかったほどです。(何度か知り合いが目の前を通り過ぎてゆくのを見ました。処方続きだったので、声もかけれず。)

この、薬局。ふつうの、いわゆる“○○マルシェ”とかでは、受け入れられないと思います。

それだけBOKUGOTOが、特別な空間をここ風紋広場に作ったとも言えます。

でももし受け入れられそうな場所や機会があったら、また開きたいなあと思うので、なんかそういうのあったらぜひお声がけください。


それではみなさん、お大事に。


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