くじらの毎日


豪雨のあと
小さな橋の袂に 大木が横たわっていた
根こそぎ 濁流によって流されてきた
居場所を失って こんなとこまで来ちまったよ
と うなだれていた

大木はくじら
ニュースでみたことがある
海岸に打ち上げられた くじら
人々は見物に集まる

大きい 大きいね
かわいそうだね
これどうしたもんかね

くじらは
自分に向けられた声を聴きながら
もう 息絶えている

大海原に
くじらの毎日があった
しぶきを散らして 泳いだ
海水と一緒にたくさんの命 飲み込んだ
たまに痛い思いもして ヒレが欠けたりした
そしてここまで 大きくなった

なんとか生きて うまく死んで
血は波にのって遠くへ消え
肉は小魚の餌となり
骨は海底に沈んで漁礁となる
予定だったのに
最後の最後に 失敗しちまったよ
と うなだれている

浅海の波
満ちて 引いて
くじらの毎日は 漂って 
やがて海に 溶けていく





日照雨

諸岡若葉の、ものごとの記録と表現。

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